海岸から船上のセンサーまで8㎞の通信に成功
LoRaWANで消費電力を1/10に削減

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海洋データをIoTセンサーによって収集・公開する「OMNI」プロジェクトに、センスウェイのLoRaWANが使われています。ネットワーク導入とその活動についてお聞きしました。

【お話を伺った方】

東京大学生産技術研究所 価値創造デザイン推進基盤 DLXデザインラボ゙
クリスチャン・フェルスナー様

センサーで海洋データを収集するオープンなプロジェクト

昨今の気候変動による漁獲量の変化や、海洋汚染など海洋問題への注目は高まってきています。しかし海への影響を理解するためには、海洋データが不足しており、今以上にデータが必要となっています。
2017年、東京大学生産技術研究所内にあるDLXデザインラボに着任したマイルス・ぺニントン教授らによって、海洋データを集めるプロジェクトが始まりました。

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OMNI プロジェクト(Ocean Monitoring Network Initiative)は、海に関する様々なデータを取得できる海洋センシングのためのプラットフォームです。完全なオープンソース型で設計図やデータは、誰でもアクセス可能なようにWeb上に公開されています。専門家だけではなく、一般の方や企業とも協働しながら、様々な海洋データを収集し利用できるようにする活動を行っています。

OMNIで使われる海洋センサーは、特別な部品を使わず100円ショップのケースや市販の電子部品、Arduinoボード、LoRaWANシールド、センサーを組み合わせた装置です。太陽光パネルと太陽光電池、バッテリーが搭載され、外装は3Dプリンタで造形したものから型取りされた成型物で作られています。センサーは海水温度、塩分濃度、位置情報を計測し30分に1回送信します。この通信システムにセンスウェイのLoRaWANを使っています。

LTEではバッテリーの消耗が早かった

実験当初はLTEで通信を行っていました。しかし、消費電力が高くバッテリーの消耗が早かったため、低消費電力であるLoRaWANの使用を検討しました。
開発にはもともとArduinoを使用していたため、センスウェイのLoRaWANシールドはArduinoに載せるだけで使用ができるのがよかったです。購入もインターネットですぐ行えました。そのほかのセンサーや部品も秋葉原などで購入しています。
基地局については、屋外用のゲートウェイをレンタルしています。自分たちで基地局を設置し、ネットワーク網を構築できるのが、プロジェクトの趣旨にもマッチしていると思っています。
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海岸から船上のセンサーまで8㎞の通信に成功

実験は、三浦半島の東京大学三崎臨海実験所や平塚沖の平塚沖総合実験タワーなどで行っていました。例えば三崎臨海実験所での実験では、海岸付近のビルに基地局を設置し、船上のセンサーまで最大で8㎞の通信に成功しました。
LTEの時には消費電力量は300mAと多かったのですが、LoRaWANにしたことで消費電力を1/8~1/10にまで下げられました。待機中の消費電力も削減できました。このプロジェクトはオープンなプロジェクトのため、誰でもネットなどで部品を購入ができることが求められていました。海洋センシング装置は、高機能な専門的な装置だと数百万円の金額になりますが、OMNIの機器であれば4万円程度で作ることができます。
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正確なセンサーデータの取得と産業への展開

今後の課題は、センサーへの付着物です。水中にセンサーを長期間入れておくと、付着物がついてしまうため、塩分濃度センサーの正しいデータ取得は望めません。また、現在の状態だと最長で8kmまでですので、10km以上の送信を可能にしたいと思っています。
また、実験をしている逗子の高校生とのプロジェクトや逗子の辺りでビーチクリーン、ワークショップも企画して活動しています。今後は地元やサーファーの協力を得て、海水浴客やサーファーへのサービス提供を検討しています。地元の漁協や企業と協力して産業分野へも展開をしていきたいと思います。
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センサーの紹介

LoRaWAN Shield for Arduino
https://www.senseway.net/lorawan-service/item/device/lorawan-shield-for-arduino/

学校名 東京大学生産技術研究所 価値創造デザイン推進基盤 DLXデザインラボ
設立 2016年12月
URL https://www.designlab.ac/

※ 記載内容は2020年6月時点の情報です。

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