「人」を中心に考えた熱中症リスク管理システム
100個以上のLoRaWANセンサーで物流施設の温度湿度管理を実現

香港にグループ本社を置きアジア太平洋地域に特化した物流施設の企画開発、マネジメントなどを行うESR株式会社様。日本でも竣工済22棟・開発中7プロジェクトの物流施設を保有し、成長を続けています。
「Human Centric Design.(人を中心に考えたデザイン)」を基本理念に、施設で働く方が快適に働ける環境づくりを構築するなかで、熱中症リスクを可視化する「ESR 環境モニタリングシステム」のセンサーと通信にセンスウェイのネットワークを活用いただいています。その取り組みと背景についてお聞きしました。

esr_photo

【お話を伺った方】

ESR株式会社
シニアディレクター ビジネスディベロップメント&シーリング 井上 太朗様
ヘッドオブプロパティマネジメント 新田 国昭様
マーケティングオフィサー 広報担当 横山 智子様

倉庫内での熱中症対策、ウェルビーイング管理

当社は企業文化として「人」を大切に考えています。倉庫のような物流業界は昔からきついイメージもあり、倉庫はつまらない場所という世間のイメージを払拭したい思いがありました。そこで、働く方の環境整備に力を入れ、保育所やラウンジ、ショップの設置など働きやすい環境の構築を進めてきました。
中でも倉庫内の暑さ対策は以前から課題でした。特に夏場の倉庫は暑く、1階にのみトラックバースがある構造のボックス型タイプは風の通りが少ないため、上層階はかなり暑くなり、体調不良、熱中症のリスクが高いとされています。

ESR守谷

倉庫内の温度管理は入居テナント様毎に荷物の種類も異なるため、基本的にはテナント様に委ねております。ただ、中には授業員の方が手作業で温度湿度チェックを行っているテナント様もありましたが、ESRとしても正確なデータを把握できておらず、データ蓄積もできていませんでした。そのため、ディベロッパーとして、またテナント様のサービスの一環としても、温度湿度のデータを把握できる横断的なツールが必要ではないかと検討を始め、議論を重ねていきました。

テナント様と倉庫で働く方のウェルビーイングのためにという視点から熱中症にフォーカスすることが決まり、データ活用のコンテンツ企画、システム開発設計を行うSOOTH株式会社様に温度湿度がモニタリングでき、そこから熱中症対策となるシステム開発を相談しました。
SOOTH様からはセンスウェイのLoRaWANネットワークとセンサーを紹介いただき、システム設計・構築から実装まで技術協力を得てESR独自のシステムとして「ESR環境モニタリングシステム」が完成しました。

熱中症危険度をわかりやすくビジュアル化

全拠点モニタリング

このシステムは、物流施設各フロア⼀定区画ごとに温湿度センサーを設置、温度/湿度データを15分毎に計測し、熱中症リスクを可視化します。データから算出された暑さ指数(WBGT)が一定基準値を超えた際は、アラートを出せるようにしています。PCやスマートフォン、タブレットなどどんなデバイスでもユーザー権限があれば見られるので、遠隔でも活用いただけています。

物流施設はかなりの広さがあるため、多くのセンサーの接続に対応できる通信距離が長いネットワークとセンサーが必要でした。各施設にセンサーは、20~50個ほど設置していますが、LoRaWANセンサーによって安価に安定したネットワークを導入できました。
また、センサーは人の体感に近い施設床面から150㎝を基準に柱に設置し、数か所は床面から10cm程度に設置して温湿度をセンシングしています。
センサーは電池式タイプでマグネットによって簡単に柱に取り付けられるため「今は一人で行っても2時間程度で設置作業を終わらせられるようになりました」(新田)。SOOTH様と事前に電波チェックの実証も行い、親機のゲートウェイを効率的に設置する方法も分かったため少ない台数で済んでいます。

ESRセンサー設置写真
システム開発で特に意識した点は、見た目の分かりやすさでした。パーセントなど指数の表示は、一目で分かるよう、顔のマークと色で危険度を表し、シンプルな表示にしています。

ご利用いただいているテナント様からは好評で、熱中症の危険がビジュアルで一目でわかるため、熱中症対策がとりやすく、庫内の温度湿度管理もしやすくなったと仰っていただけています。
ESRとしてもこれまではこのような庫内の現状をほぼリアルタイムで把握できるものは無かったので、大きな進歩でした。このシステムにより、遠隔で施設の温湿度がわかるため、稼働していない時の状況も把握でき、施設管理面で大変役立っています。
ESR各拠点モニタリング

特に今年(2020年)の夏は、新型コロナウイルス感染予防対策としてマスクの着用により、熱中症のリスクが高まる恐れがあると厚生労働省も注意を促しており、庫内でも熱中症への危険がより高まっていました。このシステムによりテナント様も熱中症の危険指数が一目で分かり、具体的な予防対策を立てやすくなったなど、テナント企業のウェルビーイング管理に活用いただいています。

ESRモニタリングスマートフォン画面

来年竣工施設に導入、データ活用

今年はESR守谷ディストリビューションセンター(以下、DC)、ESR野田DC、ESR名古屋大高DCの3施設から運用開始し、夏のデータ蓄積ができました。これにより来年の夏に向け、テナント様にも早めに熱中症対策を検討・準備頂くことが可能となりました。また、今年10月に導入したESR戸田DC、来年4月に導入予定のESR川崎夜光DCの運用にも活かせればと思っています。
今後も弊社倉庫内で働く方の環境改善、ウェルビーイング管理にを良くしていくため、これらのデータを活用していきたいと思います。

センサーの紹介

温度・湿度センサー R718A / NETVOX

社名 ESR株式会社
事業内容 物流施設の開発、所有、運営、投資助言
設立 2006年5月8日
従業員数 56名(2019年12月1日現在)
URL https://www.esr.com/jp/index.php

※ 記載内容は2020年12月時点の情報です。

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